2021年ウクライナ・オデッサの旅 

2021年ウクライナ・オデッサの旅 

日本の首都圏では緊急事態宣言が発令されている最中、こちらウクライナではコロナ感染など何処吹く風、私たちは8月中旬の17日ー23までの間、黒海・オデッサへと短かい旅行に出かけました。6泊7日(うち列車泊2日)。ここスームィより夜行列車に揺られること16時間。日本に置き換えると大阪から青森まで乗り換えなしの寝台列車で移動するのとほぼ同じくらい、距離にして1,000kmほどの道のりです。

初めての南ウクライナへ、永らくの田舎引きこもり生活を越えて気分転換をしに旅行した様子をお伝えしたいと思います!

 

 

夏季限定運行のスームィ⇄オデッサ間の直行便夜行列車で夕暮れ時にスームィを出発。考えてみると家族3人でのウクライナ国内での遠出は初めてで旅慣れた感じとは程遠く、持ち物をリストアップした後に買い出し・荷づくりでワタワタ。夫は出かける1時間前まで仕事をしていて、その後バタバタと自分の小物をリュックに詰める始末。。そんなこんなで時間通りにやって来ないタクシーをオーダーし直したりしながらスームィの小さな中央駅に着いて間もなく、夜行列車に乗り込んで一息。そんな旅の始まりでした。

              スームィ駅出発前。列車は影になっている。車内の通路と各ワゴン内

 

経済が爆発的に発展したことのないこの国では鉄道インフラが発達しておらず、大きな都市を通っていくので鉄道ラインがとても大回りに思えます。

 

・寝台列車の座席

   ドアには鏡で通路側は何もなし。ドアの前にあるレバーのようなものは上段へのステップ。引き出して使用する。

 

2段のシートが2列。計4名が横になれる個室を予約しており、通路の各部屋の扉に番号が記載されています。もし相席が男3人組で女性一人なら、完全に扉が閉まり内鍵までついているワゴンタイプではリラックスできる状況にはならなそう。運賃が安くなる扉がついていない寝台タイプもありますが、総じてレベルも下がるので寝台列車の女一人旅は相当勇気が入りそう。。また、上段に上がるための階段が設置されていない可能性があるので、腕力なく柔軟性が低い私には自力で上がる自信がありません。。2段ベッドの中心には小さなテーブルがついており、シーツ2枚とピローカバーとタオルが支給され、昔運行されていた日本の寝台列車と同じように、各座席に設置の古いマットと枕にそれらのカバーを自分で取り付けます。最近になってこれらの布類が不要な場合はチケット代から幾らか値引いてくれるようになったようですが、カバーなしで枕を使用された場合おっさん臭が残りそうな・・個人的には全員に配布して欲しいところです。

 

              入り口の座席番号表示と停止レバー。右写真上部の窓枠が如何にもこうにも動かず。。

 

行きの列車はガタイの良い夫がいくら強く引き上げようとしても部屋の窓がうんともすんとも動く気配がないまま最終的に閉まらず、日よけシートとカーテンを使って何とか風を防ごうとしたものの、夜中から早朝にかけての冷たい風が容赦なく隙間からゴーゴーと吹き込んできて、震え上がるくらいに寒い想いをするというワイルドな状況に。まあある意味ウクライナらしい列車の旅でした。(そう、これがウクライナだ!)

【列車の別エピソード】

以前キエフからスームィ行きの寝台車に乗った時は、自分たちが利用する部屋の前にある通路の窓が枠ごと外されていて(テープなどの注意事項も何もない言わば窓の大穴)走行中に通路で強く押されたらそのまま外へ簡単に放り出される状況。誰かターゲットがいてワザとそういうことになっているのではないか。。などあらぬ想像をして震えた記憶が・・そしてその後もっと驚いたことに、小石などが吹っ飛んで来ないように完全に閉じていた部屋のドアを数時間後に開けたら、何事もなかったかのように木枠の窓がしっかりはめ込まれていました。その間修理の音も聞こえず。。謎すぎます。

多少の不便さが発生しても車掌は手助けしてくれないし、ウクライナ鉄道の状況には慣れました。。

 

・寝台列車のトイレ事情

               この通路の前と後ろにそれぞれ個室のトイレあり。

最初に利用した時にはかなり衝撃な作りで驚いたけれど、慣れてしまえばなんということはない。(こういう免疫がウクライナに住んでいると自然と身につきます)基本的にトイレは停車駅に到着する前後5~10分(大きな都市はもうちょっと長い)使用不可となり通常鍵がかかります。使用方法は通常通りですが、便器の穴の部分が蓋で塞がっており、使用後に便器の下の部分にあるレバーを足で踏むと、水が流れたと同時に蓋がパカッと下に開いてペーパーごと線路へスイーっと流れ落ちていき・・・それらを見送るスキにその穴を覗くと、線路の枕木が通過していく様を確認できます。落ちたペーパーは風になびいてどこへ辿り着くのやら。。。まあ深くは考えないでおきましょう。トイレ内は決して衛生的ではないので、列車の旅の際にはウェットティッシュとマイ・トイレットペーパーを持参することを強くオススメします。

 

・列車内での過ごし方

    子供がカバンに詰め込んだルービックキューブと好きな本。外の景色は大体こういった景色が続く。

持参したお弁当を食べて(相席の若い女の子はほぼ家族の部屋で過ごしていたようで眠るためだけに利用。その部屋は私たちでほぼ独占)本を読んで話して、、うたた寝して、おやつを食べて、、寒さに凍えて寝て起きて。を繰り返したら案外時間は早く進むもので、オデッサへ到着したのでした。

この間、考えてみるとマスクは一度も着用しておらず。列車内はオデッサへ向かうスームィの人たちで溢れており、列車に乗った途端に気分はバカンスといった雰囲気満載でした。

 

オデッサに到着

コンパクトなオデッサ中央駅。到着の鮮やかなブルーの車体。直行便なのでほとんどの人々はスームィからやってくる。

             海水浴目的なのか、人々格好がラフなバカンススタイル。

   オデッサ中央駅の表側。横長で厚みのない建物で、入り口を抜けるとすぐに庇のないプラットホームに出る。

 

オデッサ中央駅は庇も屋根もない線路が集合する終着駅で、列車から降りた瞬間に一瞬全てが真っ白になるような夏の暑い日差しが降り注いでいました。たくさんの人が行き交う大きな都市が縁遠くなっていたこともあり、久々の大きな通り、人の流れ、往来する車を眺めながら大きく息を吸い込んでオーダーしたタクシーに乗り込み、中央駅から少し離れた場所で予約した部屋へ向かいました。

 

【オデッサ沿岸線・マップ】

 

・オデッサ内での移動

         レトロな趣きのあるトラム。スィーと通り過ぎると可愛くてほっこりするフォルム。

オデッサの移動で便利なのは、やっぱりトラム!(трамвай)大通りにはトラムが走っているのでミニバスやトロリーバスより安心して乗ることができるし、見た目もかわいい上にガタゴト揺れる路面電車に揺られながらの移動はフツーに楽しいです。私が住むスームィにはトラムがないので、この機会に是非利用したかった手段でした。混雑していない時間帯はウエストポーチをつけたおばさんが賃料を徴収しに車内を移動しているので、支払うと切手大の切符をくれます。

 

道と並行して走るトラム用の線路。段差はなく停留所が狭いので、近づいてくると車体が近いので気をつけなければ!

      ロータリーみたいなところに何台か集結。広告付きのトラムより普通の方がかわいい。

                    緑も映えるトラムのある景色

               新しいタイプのトラム。動きもスムーズな気がする。

 

トラムの運賃は一律5грн≠20円という嬉しすぎる価格なので、ちょっと乗車するだけでも問題なし。

基本的に乗り物は現金払い。大きなお金ではお釣りがない可能性もあるので、乗車の前に細かいお金を多めに用意しておいたほうが良さそうです。

 

・オデッサ旧市街から南へ進んだ海岸エリアに宿泊

  セキュリティーのしっかりした13階に位置する部屋からの眺め。中間層より上の人々の居住エリア。だと思う。

            13階?のせいかシャワーの水圧が弱く、そこが残念。。

 

オデッサは黒海に張り付いた形で東側は海岸線が続いており、北の方面は工業・ベッドタウンが広がり、その南方に位置する港湾エリアには旧市街が広がり有名な観光スポットが点在しています。さらにそのまま沿岸沿いに南下していくとビーチが点在するエリアになっていて、地元民や海水浴やビーチでのんびり過ごしたい人々が集まっているようです。

今回の旅はオデッサ市内で4泊というウクライナでは相当に短い日程だったので、1日は旧市街観光、その他はビーチで過ごすことをメインに考え、観光客に人気のビーチに程近いアパートの1室をBooking.comで借りることにしました。部屋の修繕が完了したばかりらしく備品や家具も清潔感があって概ね良好で、建物のセキュリティーもしっかりしていたのでその部分も安心できました。

が、、予約後に最終日がブッキングしているということで宿泊不可となり、それ以外にちょっと面倒な状況になったのですが、新たにホテル予約をするという手間と費用が発生してしまいました。

予約の際にはきちんと宿泊先の相手と連絡を取ることが、とにかく重要です。

その確認作業が甘いせいで、経験上後々面倒になることがあるので気をつけてはいるのですが、その調整役がのんびりな性格の夫。という形になっており、、モヤモヤ。。。『だったら自分でやればいいじゃないか!!』と喧嘩になるオチがついて回るので、いずれは自分で調整できる言語能力をつけたい。。と毎回思うところです。。

 

 

オデッサ在住の日本人集合!

長年放置していたTwitterのアカウントを使って、昨年よりウクライナでの日常で感じること、好きなものや食材の紹介などをちょこちょこしておりますが、そこで知り合えたウクライナ在住の日本人の方々とのやりとりは共感できる部分もあり、異国の地で感じる共感やモヤモヤを共有できる心強い存在です。200名程しか日本人が住んでいないマイナーな国で、夏の旅を利用して実際にお会いすることができました。

 

・旧市街散歩

                屋外でのランチ。ヒラメのソテーとビール。

      何の気なしに選んだカフェの店内はおしゃれ!店員がワラワラいるのはウクライナ流。

    エカチェリーナ二世像。有名な像が設置されている広場もこじんまりとして景色に馴染んで見える。

   

          パッサージュ内。あまり広くはない空間にたくさんの彫像が壁面を飾る。

         旧市街には公園も広がり緑を堪能できる。公園から見える建物も美しい。

             古い建物が並ぶ細い道に面して突如観光スポット現る!1枚壁の家

      石畳の道におしゃれな案内板。この情緒は私の住むスームィにはない。ああ、いい。。

 

日本人女性2名と男性1名、それぞれウクライナ人のパートナーがいる方々で、旦那様達も交えた楽しい食事会、旧市街の町歩き。田舎で引きこもって人々との交流が少ない生活に慣れたとはいえ、久々の日本人との会話は相当な気分転換になりました。私が最年長とはいえ世代的には近い年齢で、更にキエフではない地方都市に住んでいる者同士とは。いやはや、どこに住んでもいても素敵な出会いというのは存在するんだなあ。。と感慨深くなる想いでした。

とにかく、情緒ある街に住めるのは羨ましい!

集合してくれた皆様、ダーチャに誘ってくださったり本当に嬉しかったです。改めてお礼をさせていただきます。ありがとうございました!

 

・オデッサのダーチャ訪問

日本人のお一人で義両親所有のダーチャに夏の間滞在している方がおり、 この度の機会を利用してオデッサ駅から「エレクトリーチカ」と呼ばれるローカル電車に乗って、1時間以内に位置する内陸方面へ進んだ場所に位置するダーチャへお邪魔させていただきました!

ローカル電車に乗る機会が今までなかったのですが、車内の雰囲気と共に中央駅から出発するとすぐに田舎の景色が広がり、出発時間が正確だった割には到着が定刻より遅れ、帰りの電車は20分くらいは有に平気で遅れるという「運行ダイヤ」が全く機能していない電車の実態も体験できました。改めて、JRってすごいなあ。。


                   ローカル線の「エレクトリーチカ」

      オデッサ中央駅は正面以外からでも入場でき、ローカル線の改札のすぐ脇から入場できる。

   ローカル線の電車内。立っている女性は車掌として切符を確認している。思ったより清潔感のあるワゴン内。

 

【ダーチャに到着!】

Twitterでも度々登場するそのダーチャは、義両親が時間をかけて自分たちで作り上げた小さな別荘といった佇まいで、下水道完備・部屋を暖めるペチカ・電気も通っており、生活する為の設備が整っている『憧れのダーチャ』そのものでした。また更に庭の細かい造作や屋外キッチン、小さいお子さんのための遊戯なども手作りで製作されており、素敵なご家族が住んでいることを随所に感じるお宅でした。

    中庭につづくDIYで作ったアプローチの歩道。中央に見える小さな屋外キッチン。素敵すぎます!

    タイルを皆でペタペタ貼ったそう。一般的なダーチャでこんなに素敵にケアしているお宅は初めて!

         黒海の沿岸部から1時間以内の場所でも、ウクライナらしい大地が見える。

    主屋の2階部分はまさかの宇宙スペース!もうテンション上がりまくりです。卓球台まである!

 

庭にはウクライナの一般的なダーチャとは違い、ジャガイモなどの根菜類や葉物野菜の栽培は基本的に行っておらず、その代わりに果樹がたくさん植えられていました。8月だったということもあり収穫前のリンゴや完熟のスモモなどの果物が良い香りを放ちながら小さく揺れていて、大きく息を吸い込むと色々な大地の匂いがしてきてリラックスできる。そんな素敵な場所でした。

                   庭園ですくすく育つ果実たち。

 

今年は春の冷たい雨と急激に暑くなった初夏のためにたわわに実るはずの葡萄の出来が悪く、桃の一部も不作など、実際の菜園は気候の変化をダイレクトに受けてしまう、かなりセンシティブな一面もあるというお話を聞くこともできました。私もウクライナ生活の次のプランを計画中でして、、(後日ブログにてお伝えしていこうと思います)

今回の旅は色々と刺激があり、やっぱり異国の地で日本人のかたと交流できるのは想像以上に嬉しい体験でした。

 

 

想像していたよりもずっと良かったオデッサ

 

旧市街

オデッサと言えば、黒海に面する要塞都市といったイメージや、ポチョムキンの大階段、オペラ座などの古都に相応しい建築物や街並みの旧市街地が広がる観光都市。

湾岸沿いに広がる旧市街地の規模はさほど大きくなく徒歩で歩き回れる程よいサイズ感です。碁盤の目のように整備された街並みに、夏の観光シーズンはカフェやレストランが屋外に庇を伸ばしたり立てた日除けの下にテーブルと椅子を出していて、その風景を眺めながら街歩きをするのも楽しいです。歩道の幅もキエフの中心街のように広くはなくコンパクトで、建物と街路樹に挟まれた歩道をゆったりと散策できるが良い感じです。建築を学んだことがある私ですが、、教会の形状や歴史的に重要な建造物などにあまり興味が湧かず、看板や裏路地や店内の造作、ブランドやローカルなお店のショーウィンドウなどを眺めるのが楽しく、その場に流れていく人の服装やスタイルを含めた現象を眺めるのが好きです。今回は日程上ゆっくりと旧市街を眺めたり写真を撮ったりする十分な時間がなかったので、ここはリベンジで再訪したいと思います。

春から初夏にかけて。夏の終わりから秋にかけて。どちらも趣きがあって良さそうな雰囲気を十分感じられそう。

 

 オデッサ国際映画祭が開催されており、ポチョムキンの大階段をふさぐ形で特設ステージが設置されていた。残念。。

       オデッサのオペラ座。リーズナブルな価格でオペラを堪能できる。いつか観覧してみたい

    歩行者天国の通り。少し陽が傾き出して木々が石畳に優しい影が落ちている。夜も歩いてみたい!

           カフェレストランの間を抜ける。いえいえ、ここは普通に舗道です。

 

 

・黒海・たかが海、されど海。

ウクライナは物価が安く食材や料理も美味しい。ビールなどアルコール飲料もクオリティーが高くヨーロッパからも近い。海あり古都ありで、特に初夏にかけてはカラッとした晴天が続き、更にそれに加えて魅力的な美女大国!

これだけのポテンシャルを持ちながらも各都市のブランディングがイマイチで、お店やインフラの設備投資はまだまだ頑張れそうなのになぁ、、その落差が勿体無いよなぁ~と常日頃から思いつつこの国に住んでいるせいか、こちらに初めて住んだ10年前よりずっと便利になり、商品のクオリティーも店員のレベルも飛躍的に良くなったおかげで嫌な目に会う機会もだいぶ減ったことを加味したとしても、結局はウクライナだしなあ~。とさほど期待していなかった黒海のビーチ。いい意味で裏切られました!

 

      近年ウクライナの色々な場所やスポットのエントランスには『I ♡ 〇〇』というサインが設置されている。   

 

観光場所として有名な「アルカディア」というビーチにアクセスしやすい場所に宿泊を決めたのですが、街の大通りから海岸へと続くアーケードを通ると、新しいカフェがたくさん並んでおり、小さな広場や舗装された通りには家族づれやカップルがゆったりとくつろいでして、整備された観光地!といった風情そのもの。海は想像していたよりも綺麗そうで(海面には藻が発生していた・のちに理由が判明)、白いビーチと海岸から吹いてくる心地よい風を感じながら、あらら!いいじゃないの~!』と、以前流行った白塗りのお人形ロボットとおじさんが繰り広げるシュールなネタのお笑い芸人が言っていた、独特のイントネーションで独り言を放っておりました。(苦笑)

 

          数100メートル続くカフェやお店を抜けた先には黒海のビーチが広がる。

 『黒海』という名の通り、黒っぽい海かと思うかも知れないが実際は淡い色味の海。ふわっとした海風も心地よい。

            人生において、たまには心からリラックスすることも必要だ!

 

・「行き着く先は海」という普遍的な感覚を持つ、島国出身のDNA目覚める

昔から沿岸近くを車や電車で通過している時、景色の隙間から遠くに水平線が見えると、お腹のあたりからドラマチックでキラキラした気持ちが湧き上がり、『あ、海だ!』と分かりきっているのに自然に言葉が出てきてしまいます。久々に異国の地にある黒海を見た時、島国生まれの私の中にある、行き着く先で必ず出会える『海』そのものが心の何処かで大きな達成感へと変換するスイッチー。それが水平線を見た瞬間にパチっとONに切り替わることで、安堵感や清々しい感情が深くじんわり浸透していって、心地良さが一段と染み渡ったのかも知れません。

生まれ育った環境に似た、匂いや風、山並み、水平線、温度などを感じた瞬間は、実は時空を超えて昔のその瞬間にコネクトしているんじゃないだろうか。なんて飛躍した考えさえ脳裏をよぎります。旅先でまったりとした時間を過ごすことは人生において重要だなぁなんて、つくづく思う旅でした。

 

 

・海岸線に点在するローカルなビーチ

 

【オデッサ沿岸線・マップ】

旅先でテキパキと動きたくない夫とマイペースな子供を連れているために、1日があっという間に過ぎ去り、みるみる滞在期間が減っていく。。黒海でゆっくり過ごしたい!という当初の計画が頓挫するかも知れないと少しあきらめムードになったものの、旅の最後は観光地化が進んでいないビーチでまったりゆったりした時間を満喫することができました。

 

  無料で使用可能のハンモック。子供達が戯れたりおじさんがくつろいでいたり。それぞれの時間を過している。

 

「アルカディア」から北へ進んだところにあるビーチへ行くには、トラムが走っている大通りから海岸線に向かって徒歩で下っていくことになります。しばらく歩くと道がなくなり、下へ向かう長い階段が出現します。それをぐんぐん下がっていくと、一旦サイクリング道路のような通りに出て、更に下っていくと海辺のカフェのような開放感ある建物があり、そのデッキを超えると砂浜が広がっています。私たちが使用した海辺のカフェは白を基調としたオープンテラス。最初に訪問した時には午後もかなり進んだ時間になっていました。テラスの一部に作られたステージでは、週末開催のライブなのかバンドマンがリハーサル中で、ビーチに面した開放的なローテーブルとビーズクッションが並んでいるカフェエリアでその音を聞き流しながらビールを飲みつつ、夕暮れ時まで海を眺めることができた素敵な時間でした。そのビーチは砂浜の幅が狭く海まで近いので、こじんまりとした小規模感が逆に心地良かったです。

              テラスから海までの近さ!こじんまりした感じが良い。

翌日も同じ場所で海水浴をして過ごしたのですが、レンタルで(1日/@150грн≠¥600)ロングチェアを借りて砂浜に等間隔で刺さっている日傘の下に並べてもらい、ビキニのウクライナ美女に紛れて水辺で遊ぶ子供と夫を眺めたり、オーダーしたアイスクリームを食べたり、たまに海に浸かってみたり。波のさざめきと浜辺の人々を眺めながらぼんやりと過ごしました。

 夏バイトらしき10代の男の子達がちょこちょこやってきて片付けてくれる。こんな場所で短期バイト、羨ましい。。

                 海の空気を存分に吸い込みたい。

 

観光地化された「アルカディア」は、地形上オデッサ上部の海岸線から流れ込む有機物の影響で藻が発生しやすく、ビーチ自体も広々とした砂浜がどーんと永遠に続くような規模ではないです。地元民からは、カフェの乱立とビジネス臭、有機物による海水の汚染などが気になるようであまり人気がないようです。私たちが1日半過ごしたビーチやその周辺のビーチは小規模で、地元民たちも自分のお気に入りの場所がありそうな印象でした。

扉付きで仕切られた簡易的な更衣室やトイレも綺麗に保たれていて不快指数0。飲食の持ち込みOK(そもそも何も言われてもいない)で入場料もかからずカフェのメニューも高くない。それにしても、ペットボトルや持ち込んだ食べ物のゴミらしきものが浜辺に落ちていたり散らかっているところを一度も目撃していないのはある意味すごいことです。日本だったら・ゴミは持ち帰ること!or 分別!・ペット不可・ほにゃらら・ほにゃらら〜と、サインや注意看板がたくさん立っていそうな気がしますが、スタッフものんびり。人々ものんびりで、これが本来の海水浴なのかなあなんて、別の意味で感慨深くなりました。

 


             淡いピンクに染まった空と少し肌寒い風。情緒ある景色。

 

 

・最終日 列車の時間が来るまで

スームィからオデッサへのアクセスは鉄道のみなので、中央駅への移動がスムーズなのは助かります。最後に宿泊したホテルを朝出発してタクシーで中央駅まで向かい、駅構内にある手荷物預かり所へ一旦荷物を預けて、駅裏にある市場へ燻製の魚を買い出しに行きました。日曜の午前中だったこともありかなりの人出。安い服や雑貨・野菜・香辛料などわちゃわちゃしており、色々な匂いが混濁して大きなバザールならではの活気があります。お目当の燻製の魚をゲットした後は駅裏の小規模な公園に出されている屋外カフェで最後のビールをいただきました。

 

 【中央駅裏の大きなバザールにて】 

    中央駅裏にある大規模なバザール。エントランスの門が立派。入り口のショップは新しい。     

     奥に行くと新鮮な野菜たちが山のように売られている。日曜だったので地元民もたくさん。

   ピーチの山!当たりの桃はもう本当に美味しくて幸せな気分になる。 売り場の甘い香りも最高!

               香ばしい魚の匂い。懐かしくて齧り付きたい。

マグロの塩漬けその他おつまみを購入。塩辛いけど旨し!食べ過ぎるとむくんで大変なので、食べる量を気をつけて!

   脂の旨味に燻製の香り。ビールのアテに最高すぎる。。海の魚は見ているだけでテンションが上がる。

 

 【中央駅横にある小規模で居心地の良い公園】 

            中央駅横の気持ちの良い公園。たくさんのカフェが並ぶ。

 

 

オデッサ旅行での所感

観光都市として

観光スポットを足が痛くなるまで忙しなく巡り、事前にチェックしておいた評判のレストランを探して、記念写真も怠らない。といった観光旅行への興味は年を重ねるたびに薄れてきており、たまたま入った感じの良いレストランで美味しいメニューを当てたり、木陰のカフェでビールを飲みながらほろ酔い気分で道ゆく人々を眺めたりする方が、後々思い出す旅先での記憶のディテールが多いような気がします。

オデッサ、私はとても気に入りました!

・海があり丘があり、旧市街と有名な観光スポットがあり、オペラなど文化的なイベントも多数開催されている。

・市街地に宿泊して中心街をゆっくり歩いて探索するだけでも楽しめる。

・夜にはおしゃれしてオペラ鑑賞という大人の時間を過ごせそう。

・子供連れの場合は海岸へアクセスしやすい場所に宿泊して黒海を満喫するだけでも良し。

ウクライナに住んでいるなら、ウクライナでゆっくり過ごせる時間があるなら、是非訪れて欲しい街です。

トイレ事情ですが、無料・有料含め頻繁に掃除しているのか、全体的に綺麗に管理されている印象があり、不快指数はかなり低めです。

オデッサの物価

同じウクライナ国内だけあって一般的な品物の物価は安いですが、レストランやカフェ、アクセスしやすい立地の宿泊施設はスームィのような地方から見ると全体的に高く感じました。スームィで家族3人で楽しむ、雰囲気も味も良いレストランでのランチするよりも3割増しくらいの実感です。それでも他国から比べると全てがお安く感じるでしょう。

オデッサの言語

キエフで始まったユーロマイダンの騒乱以降、普段は基本的にロシア語だった言語が、特に東側でウクライナ語を第一言語として話す人が増えたことは確かです。昨年から『ウクライナの公用語はウクライナ語である。』という宣言があり(まぁ宣言するまでもないかと思いますが・・)それに伴い店員や役所などではウクライナ語を使用するルールが進められ今に至ります。ウクライナ語が全く理解できずロシア語さえ拙い私は、「それはウクライナ語かロシア語か?」の壁にぶち当たってしまうと混乱して結局意味がわからなくなってしまう。。という状況に置かれる度にモヤモヤしてしまいます。。それがオデッサに到着した途端に大半の人がロシア語を使用しているので、意味が分からなければただ単にそれが自分の知らないロシア語だということになるので、一気にモヤモヤ解消・安心できました。また、いちいちマゴマゴしないで済んだので、随分と気持ちが楽でした。

オデッサは「コロナ感染」に対して寛容的すぎ?

もう一点驚いたのが、従業員以外のほぼ全ての人がノーマスクでいること。

スームィでは(おそらく他の都市も)儀礼的であるにしても屋内ではマスク着用義務があります。考え事をしていてうっかり施設にマスクなしで入るとセキュリティーがやってきて肩をトントンされます。スーパーでマスク不着用ではレジに並んで自分の番が来ても商品を購入することができません。それが習慣化しているので最初はびっくりしましたが、皆が着用しなければすぐにその概念は打ち砕かれ、ウクライナ中に店舗があるスーパーСільпо以外でマスクを着用することはありませんでした。日本人男性のウクライナ人の奥様が、オデッサ市の観光地としてのコロナ対策に関しての懸念と対応に憤りすら感じているようでしたが、これから寒くなるにしたがってどのような感染拡大があるのか、今の所は全くの未知数ではあります。

日本では緊急事態宣言の延長やお盆休みの帰省自粛などによって、ヘラヘラと他人事のような振る舞いをして自由に過ごす人に対して猛烈なバッシングと排除すら起こる日本に比べると、他者の様子を見習いながら動く発想のないウクライナでは、他人の行動に関してとやかく言われる必要なし!とのスタンスでバカンスを過ごしていそうです。

 

旅に関して。ウクライナにいて思うこと。

日本での夏季休暇の短さは、ウクライナ人からは想像もできないくらい短いです。

細かい部分を考えてみると、日本人の短期休暇を効率よく使えるように、より動きやすく、最短時短で、高コスパで便利な旅プランが合理的に発展していった側面もあるのかなあと思いました。どこでも自動販売機がある。案内がわかりやすい(道に迷っている暇などないわい!的なせわしなさの中で)。トイレの数が多い。アクセスしづらい場所は衰退する運命。。などなど、ネガティブ要素を削ってより多くの観光客を引き寄せるために日本国中で頑張った結果が随所にあると思います。

ウクライナでは合理的な部分が未成熟なことと実際の国のサイズ感が大きいので、ただ歩くだけでも時間がかかる。。日本の休暇日数では全く足りません。今回の旅の日程も短かすぎました。

今回の旅で一番もったいなく感じたのは、特産品がないこと!お土産がマグネットだけなんて悲しいです。オデッサ発祥の老舗まんじゅう!みたいなこだわりの商品が欲しいのです。。こんなに豊富な食材や海産物があるのに有名な特産品がないのは悲しいなぁ。。これ、誰かにブランディングして欲しいと切に思います。この感じはオデッサに限らずウクライナ全体に共通していることなんですけど。。

       帰りの寝台列車からの車窓。ウクライナらしい広大な大地が広がっている。

といった旅でしたが、帰りの寝台列車で到着後しばらくは、地方都市のいつもの景色が何時にも増して色褪せて見えてしまい、、華やかな街を思い出してはため息。。そんな数日を過ごしていたら急に季節は秋めいて風邪を引くわ、子供の学校関連でバタバタしている最中にギックリ腰になるわで、完全な日常生活に引き戻されております、はい。

次回はもっと長く滞在するよう今から『オデッサ旅貯金』をしようかなあと思います。

 

ウクライナの地方都市、スームィよりSACHIALE Lifeをお届けしていきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました!