世界のスーパーマーケットは楽しい in ウクライナ Vol.2

世界のスーパーマーケットは楽しい in ウクライナ Vol.2

海外生活が長くなってくると、食に関する執着度も増していっているような気がする今日この頃。

昨年当ブログにて私が一番気に入っているウクライナのスーパーマーケット「Сільпо」をご紹介しましたが、

Сільпоに関する過去記事はこちら→

今回はウクライナの食品小売販売でNo.1のシェアを誇るスーパーマーケット『АТБ=(ATB アテベ) 』をご紹介したいと思います!(以下АТБの公式サイト)

     既製品のサラミ・ソーセージコーナー。生肉もパック詰めされていて便利。値段も手頃なラインナップ。

 

    ホームセンターか工具屋にしか思えないロゴデザイン。この看板だけなら食料品店だとわからない。

 

結婚した2011年当初のスームィは、ソ連時代から続く展示会のパビリオンのような小売店が並ぶショッピングビルがあるだけで、スーパーも「АТБ(アテベ)」を含む数種類の店舗しかなく、東京から嫁にやって来た身としては相当に退屈な地方都市といった町で、スケールが大きく異なる距離感の中どうやって日常を過ごせばいいのか戸惑う感じ全開でした。その後すぐに引っ越したキエフでは近所に「АТБ(アテベ)」がなかったこともあり、必要最低限の食材をちょこっと買うといった位置付けのまま、蛍光灯がむき出しで薄暗い店舗へ積極的に買い物に行こうとは思えない、地方の店舗というイメージが長らく私の中に残っていました。

その当時スームィは大型スーパーマーケットの進出が遅れており、ソ連の雰囲気が色濃く残る円形状の釣り天井が特徴の大きな市場などで肉類などをまとめ買いして、徒歩圏内の小型店舗で日々の日用品を買い出しに行くといったスタイルが主流だったようです。そんな中、頻繁にディスカウント価格の商品がローテーションしていく近所のスーパー『АТБ=(アテベ)』は便利でリーズナブル、お店の外見よりコスパ重視!といった買い物スタイルが定着しているように見えました。

 

大型店は見ているだけでも楽しいが、中規模店は結局実用的が好まれる。

   画像は空いている時間帯。夕方には大型のカート使いとカゴを持っている人がかち合う。その時はもちろんレジも行列!

海外からやって来た外国人にとって地元の小規模スーパーより大型でたくさんのものを選べたり売り場を見ているだけで新しい発見もある大型店舗の方が圧倒的に便利です。АТБ(アテベ)は全てがコンパクトで華やかさもないし、店内の通路は狭い割に商品数が多く従業員数も多い気がする。昼時や夕方の時間帯に売り場でノロノロしていると、さっさと商品を取りたいおじさんやおばさんたちの圧を背後から感じたりして落ち着かない。会計も例によって愛想がなく全体的に忙しないので、外国人が好んで行きたくなるような雰囲気はありませんでした。

 

              均一な照明。全体的に均一な形で配置された什器。

その後スームィにも衣料品店が入った商業施設が2つオープンして、どちらにもСільпоが入ったため、出産を機にスームィへ戻った1年はほぼストレスなく買い物が出来る環境ができてホッとしていました。

 

ここ数年のАТБ(アテベ)の進化が著しい!

АТБ(アテベ)の外観とウクライナ国内の店舗数

もともとディスカウントタイプのスーパーで、セール品が頻繁に入れ替わる地元密着の店舗なだけあって、大型店ができても不動の地位を保ち続けたАТБ(アテベ)。

小・中規模店の強みは、日本のコンビニのように既存の賃貸スペースに店舗をオープンできるところです。ソ連時代からある古い煉瓦造りの建物が立ち並ぶエリアや、それ以降に建てられた1F部分に店舗が入る建物にお店を構えている場合もありますが、スームィのような広いスペースのある田舎ではプレハブのような窓のない簡易的な構造物を建てている場合も多いです。

     中心部から少し離れた、小規模な店舗が集まった商業建築。1F部分にАТБ(アテベ)が出店。

 

              倉庫のような外観で窓のないプレハブタイプ。

 

АТБ(アテベ)はウクライナ国内でどんどん店舗数を増やしていって、現在では全国で1228店舗あるようです。ウクライナの人口は現在4439万人なので10万人に対して2.7軒。スームィ地方の人口は107万人で15店舗あるので1.4軒。といっても町から数キロ離れた場所はすぐに広大な農地が広がるド田舎になるので、店舗は町の中心エリアに集中しています。

《ここでスームィのミニ情報》スームィ地方の面積は南北に250km/東西に150km

日本に当てはめると、北は福島県いわき市から南へ直線距離で館山まで。東は千葉県銚子から西へ直線距離で八王子の先くらいまでとほぼ同等サイズ。その中でも私が住んでいるスームィ市は半径5kmで描いた円の中に収まる規模。これはほぼ山手線の内側と同サイズです。全ての店舗がその内部に存在していて、徒歩圏で行けるお店はАТБ(アテベ)だけでも3店舗はある距離感です。

 

今回の記事とは関係ないですが、、次回、東京のサイズ感とウクライナのサイズ感を地図とスケールを合わせて比較したブログも書いてみようと思います。意外に楽しいかも知れない。。

 

スームィの中心街から少し離れた大通りに面する店舗

 スームィで一番好きな建物。アールといいカラーといい、レトロ・フューチャーな細かいデティールも侮れない!

          建物内に入ると正面の踊り場に吹き抜け。そこに螺旋階段あり。

この建物はソビエトの匂いがするクラシカルな建物で、中央に螺旋階段がありアールを多用した意匠でずっと気になっていた外観でした。以前はグラム売りの薄暗い古着屋が入っていて、せっかくの大きなファサードもうまく活用できておらず長らくモヤモヤしておりました。。

2019年末にウクライナ・スームィへ再移住した際に、この建物の1F部分が新しいタイプのおしゃれなАТБ(アテベ)に生まれ変わったのを見て、やっとこの空間を生かせるデザインの店舗がオープンしていたことは部外者のくせに何だか嬉しくなってしまい、気に入った内装で買い物できることは今でも少しテンションが上がっております。このタイプのオシャレ店舗はスームィではここだけで、通路も広くゾーニングも分かりやすいので、徒歩圏で一番遠いこの店舗に来ることが多いです。わざわざ来ていることも影響してか、他の店舗よりいくつか余計に買い物をしているような。。ヴィジュアルってつくづく大切だと実感します。

 

     入り口はコンパクト。入ってすぐに設置されている自由に(無料)使えるコインロッカー。

 

АТБ(アテベ)の野菜/ フルーツコーナー

ウクライナの大型店で量り売りを買いたい時はちょっと面倒。。手書きの筆記体で書かれた商品名を記憶して自分で計りに乗せ、更に商品名をウクライナ語で入力する必要があり、やり方もいまいち分からず初心者の外国人にはチンプンカンプン。。その点АТБ(アテベ)の量り売りは外国人にとってはハードルが低いです。設置されているビニールに好きなだけ詰め込めば、レジで重量を図れるシステムになっているので、会計の際に店員さんが入力してくれます。商品の近くに計りが置いてあるので目安の金額も理解できる。因みに野菜や果物の価格表記はほとんどが1kgあたりの金額です。

ただ注意が必要なのは同じ野菜やフルーツが数種類ある場合。レジで店員にどの種類か聞かれてることがあるので、その時は商品の価格表を写真に撮って見せれば問題なく会計が完了します。

 

    「KOMO」のキューブタイプは日本のベビーチーズの特大版。普段食べるのに使いやすい。

 

          お茶も安いティーパックがたくさん。乳製品コーナーも十分なセレクション。

   お米は画像(赤と黒・中心にハートマーク)のメーカーの丸いお米を購入。高コスパで良く味も問題なし。

                       塩・粉物エリア

               お菓子コーナー(量り売りはそのままレジへ持ち込みでOK)

АТБの標準的なパンコーナー。全世帯が購入する一般的なパンで、回転率も高いので古くなっている場合もなく安心。

   この店舗は冷蔵ビールのセレクションが少なめ。大抵冷蔵庫の温度設定が高めなのであまり冷えていない。。

      冷凍スペースも広くて見やすい。奥ショーケースがアイスクリーム、手前は冷凍食品。

  基本的な日用品も購入できる。安価で何気に使いやすい商品があるので、PBを中心に試してみるのもGood。

  傾斜したファサードの大きな開口部から自然光。窓は一面に広がっているので店内は心地よい開放感あり。

 

АТБ(アテベ)のPB(プライベートブランド)は4種類もある!

1.低価格帯 2.リーズナブルで求めやすい価格帯 3.ちょっと高めな価格帯 4.厳選素材のみを使用した高めの価格帯、といった4つの商品価格で区別したわかりやすい展開になっており、PBブランドとして売り場でも目につきやすいスペースに配置されています。一見すると海外ブランドなのか国内の食品会社の商品なのか分からないですし、別に特別視する必要もないのですが、こういうマーケティングに興味がある私としてはとても興味をそそられます。

以下のリンクはАТБの公式サイト/ プライベートブランドの紹介ページ

————————————————————————————————–

1.低価格帯の『розумний вибір賢明な選択)』

売り場で目にする機会が多いPBです。粉物から乾き物、お茶やミネラルウォーター、お菓子やアイス、キッチン周りの日用品やペーパー類など低価格で探していくと大抵目に留まるラインナップです。ウクライナでは高品質なROSHENのチョコレートがあるので、日本の安いチョコとも違う風味のない甘ーいテイストのチョコレート関連お菓子はこのブランドラインではお勧めしません。(これに関しては「賢明な選択」とは言えない・・)強いこだわりが必要のない消耗品はこちらを選んで問題はなさそう。

私のオススメは、ガス入りの水(とにかく低価格!/500mlで≠15円)・煮詰めたコンデンスミルククリームが挟まったクッキー・スタカンチクと呼ばれる、カップもなかシリーズのアイスクリームは安くてコスパが良いです。

 


  がま口をあしらったロゴマーク。激安水 / 煮詰めたコンデンスミルクが挟まったさくさくクッキー。美味しい!

   くまのイラスト付きのカップ型コーンにアイスが詰まった、一番安価なスタカンチク。十分美味しい。

 

————————————————————————————————–

2.リーズナブルで求めやすい価格帯『Своя Лінія(自分ライン)』

『АТБやるじゃん!!』と一気にスーパーとしてのАТБ(アテベ)全体を見直すキッカケとなった「Своя Лінія」。とにかく値段の割に商品全体のクオリティーが高いのです。『この味でこの値段だったら今後コレでいいわ!』『この』『コレ』に当てはまるラインナップの数々です。

海外生活で嬉しいことの一つは、美味しいレストランや食べ物を知る事が出来た時なんかもそうですが、「食」に関連することで自分のなりの発見があった時。近所で買える食材の中から自分で選んだ食料品や調達したものが上手く調理できた時は想像以上に嬉しくなるものです。この地で自らのオリジナリティーを見つけた!という達成感すら湧いてきて、それが日常生活の積み重ねの中で自信につながることさえあります。

たかが気に入った食料品に出合っただけでオーバーな!と感じるかも知れませんが、食べる楽しみのウエイトはとても大きく、更に高コスパな食材が近所のスーパーでいつでも購入できるのは嬉しい限りです。パッケージもPOPなものが多く目を引きやすいし味もいい。日々新しい商品を見かけるので、АТБ(アテベ)もこのラインに一番力を入れているんじゃないかと推測します。

画像は普段使いの商品の一部。探せばまだたくさんありそう。このシンプルなロゴ、ウクライナに滞在するなら覚えておいて損はないと思います!

 箱もしっかりしていて、それぞれのフレーバーも嫌味のないテイスト。ちょっとしたお土産でも問題ないレベル。

  ジョージアワイン「キンズマラウリ」がまさかの400円以下!味はライトで深みは弱いがクセがない、昼飲みにも!

    このカレー粉(左)は配合のバランスが日本人好み。最近出合った中で一番お気に入り商品。

        ソース系やインスタントラーメンも値段とクオリティを考えればgood。

 このPBのホワイトチョコはオススメ。普通に美味しくて値段も安いので嬉しい。ゼラチンもパッケージがかわいい。

      牛乳「молоко」はこのようなパウチが多数あり。シンプルなイラストデザインがいい感じ!

乳製品によくあるこのパッケージは、使いづらいのになぜか今も販売され続けています。上部の角をハサミで小さくチョンと切って注ぐ。もちろんポヨーンとなって自立しないので、大きいカップにそのまま納めて冷蔵保存します。厚手の紙の場合もありますが状況は一緒。スメタナ、ヨーグルト、ケフィール、牛乳、マヨネーズまで、全部がこのパウチ式なら冷蔵庫の中がパンパンになります。最近はペットボトルや蓋つきのパウチが主流のはずのなのに、なぜか売り場ではかなりの種類が売られて謎。

 

        ボックスと刃はないが、ビニールの厚みなど他商品と比べて優れている。

 

————————————————————————————————–

3.フランス語で『De Luxe(贅沢)』の黒を基調にしたロゴ。比較的高価格帯

高価格帯と言いながら、頻繁にセールをしているのであまり高いとは感じないブランドライン。フランス語のロゴなのでずっと輸入品だと思っていたのですが、これもАТБ(アテベ)のPBブランドです。オイル系や魚系の缶、パスタやお茶などパッケージデザインも外国を意識したものになっています。一番気に入っているのはバター。一般的なバターの後にこれをチョイスするとミルクを感じるクリーミーな味にハッとします。お菓子づくりにぴったりそうですが、他にも美味しいバターはあるので買い時とセールが重なった時にはこれを購入します。

   シルバーでライトブルーの細いラインが入った『De Luxe』のバター。ミルキーで美味しいのでオススメ。

 

            パッと見、ウクライナ産のPBブランドだと思えない。

 

ウクライナ産のパスタ、「茹でるとネチョネチョ」問題

ちょっと話は逸れますが、ウクライナ産のパスタは茹でるとネチョネチョしてしまい、茹で汁がドロドロしてきて調理途中からアルデンテに仕上げられそうもなく全くオススメしません!(バーコードが48~から始まるもの)この「De Luxe」のパスタはセールだった場合は買っても問題ないです。ただ茹で時間の表記が長い気がするので、早めに湯ギリすること。

 

————————————————————————————————–

4.地方都市はターゲットじゃない?!『TODAY』

АТБ(アテベ)のHPを確認して初めて知ったブランドラインの『TODAY』。これらの商品はスームィでは扱いがほぼないです。。店舗で探してみたら唯一カップモナカアイスの「スタカンチク」が一つだけ売られていました。しかも一番安くて十分に美味しい低価格帯の『розумний вибір賢明な選択)』と同タイプのアイスで3倍以上の価格。。ヨーロッパの輸入アイスは日本の高価格帯と同じクラスのものが大型店で販売されていますが、そんなに高くもない。地方で売られていないのでわざわざ購入しようという興味が湧かなかったのでラスト一個に手は伸びず。。どれほど美味しいのだろうか。

もしかすると相当な高コスパの可能性もありますが。ちょっとお金を出せばもっと美味しいブランドがたくさんあるので、わざわざディスカウントスーパーで購入することはこれからもなさそう。。ラインナップも少ない上にターゲット層が薄い気がします。

   安い「スタカンチク」の3倍の価格といっても60円程度だが、それならもっと別のメーカーのが食べたい

 

海外在住で大切なことの一つは、その地の『食』が好きなこと。

気候や環境、住んでいる場所やそのロケーション、言語、人々の性質、、など色々な要素からこの国が好き・嫌い。というジャッジをしていると思いますが、私はもともとロシア系の顔立ちやスタイル抜群なところが好きで長年憧れを抱いており、それ以外の要素もたくさんあったので、偶然ではなく自分で選んでやって来たというところがあります。北海道育ちであるがゆえに広い大地も冬の寒さも身体の深部に染み渡る。そこへきて『食べ物』も美味しいウクライナは、いろいろな要素を加味してもここで生活するのは十分やっていける土壌です。

                 大通りに面した場所に立つ建築物

東ヨーロッパのエリアに存在するウクライナは、物価が安くてそれほど治安も悪くなく旬の農産物も美味しいので、もっと発展してもいいはずだと個人的には強く思います。隣国との軋轢や地政学的な地理的条件、汚職がはびこる政治体制、保守的な要素が残るウクライナ人の性質など、すべてを受け入れている訳ではありませんが、日々の『フツーの食事』が美味しく感じられることは、飽きずに長く住むことができる大切な要素の一つだなあと心底実感しています。

海が好きだけど食事が合わない。。文化は好きだけど食事がまずい。。これは住んでいる期間が長ければ長いほど、ボディブローのように効いてくるような気がします。

 

生活は結局、毎日の積み重ね。

ウクライナのローカルでピンポイントな話題になりましたが、この流行病が世界中で終了してウクライナへ制限なく訪問できる日が1日も早く来ることを願って、いつか誰かの役に立てればと思いこちらでの生活をブログに書き綴っています。

新たなデバイスや翻訳機能の進化・新しいアプリの発展などで、言語が分からなくても外国人との距離を縮めることができる現代。その壁が払われた後に訪れるより良い新しい体験を夢見つつ、今、足元にある日々の些細な出来事を感じ続けること、その蓄積がいつか大きな層になって自分自身の土壌を豊かにする糧になればいい。そんな想いで生活しています。

アジア人ですらほとんど見かけないウクライナの地方都市、スームィよりSACHIALE Lifeをお届けしていきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました!