犬の保護施設を訪問 ウクライナ・スームィにて
時間の経過スピードは心的状況によって変化する
自分の生活でも、NPOの運営やボランティアに関しても、しなくてはいけない事がありすぎて全てがスローペースな気がする。それは自分の言語能力のせいであり、すぐに偏って混乱する私の脳みそのせいでもある。
1日があっという間に過ぎて、1週間があっという間に過ぎて、一月が過ぎていく。
そうしていたらもう2024年の後半戦も目の前である。
動物愛護活動への支援をしたい旨の連絡をいただいた。
友人のボランティアが以前より支援活動しており、犬の保護施設があることは知っていたが、自分の仕事として捉えたことはなかったのでこの機会に施設を訪れ支援品を届けに行ってきた。
子供の頃飼っていた犬を思い出した。『彼らはおそらく、十分に幸せだったはずだ』
最期まで我が家の一員として過ごす事ができたから。
犬が集められた保護施設は、おそらく以前から空き地だったスームィ市の郊外にあった。
施設の建物の裏手に広がる林のエリアでは、ある間隔を開けて犬小屋が設置されており、鎖で繋がれた犬たちは新参者の私たちを見るなり猛烈な勢いで吠え立ててきた。獣臭と糞尿の匂いが広がっていたが、広い敷地を進んでいくと次第に慣れていく。
私が幼少の頃は犬小屋と鎖に繋いだ飼い犬が庭先にいるのは普通の光景であり、通り過ぎる時に吠え立てられるのは当たり前だったので、なんとなく懐かしい感じさえした。
ただ、犬の数が多いことと、鎖が長いので彼らが噛もうと思えば手足をガブリとされそうな不安があったことは事実。もし噛まれたら。おそらくすぐに病院に行って処置をしなければ死ぬリスクすらあるんじゃないかと、犬が吠えたて近寄ってくる度に身体の側面の産毛がジワリとする感覚があったことは否めない。
「はいはいはい。大丈夫だよ。元気?」など声に出し少し誤魔化した。
さらに進むと特別に設置された小屋が見えてきた。
鉄の骨組みを木材の板で囲み、鉄製の柵と扉がつけられた小屋が並ぶエリアに入った。
体のサイズに合わせて数匹ずつでシェアされた室内にはたっぷりと餌が盛られたお皿が置かれ、奥には木製の犬小屋もあった。柵がつけられた小屋で飼育されている犬はリードが外され自由に動き回れるが、その小屋を利用できない犬たちは木製の犬小屋にリードで繋がれた状態と、放し飼いにされている犬も混じっており、それが施設へやってきた順番なのか、犬の性格や相性の問題なのかまでは確認できず。アスファルトの敷地も十分な広さはあったが、檻に入れられている状態が日常であり、この時間滞在していたスタッフやボランティアの人数を考えると致し方ないのだろう。
全体的な印象は、犬達が500匹も集められているが狭く陰鬱な感じはなかった。
ボランティアの人数が足りておらず、散歩の回数に制限があることと、餌がお皿に残っていることに加え、糞尿の始末が常にできる状況ではないため、発生した蠅がたかってしまっていることなど運営上の懸念は尽きなそうだ。詳細の事情は今後追って報告したい。
今回施設を訪れたミッションは「遮光ネット」を届けること。
私は人生で動物に関しての支援を行ったことはなく、日本からウクライナ支援を積極的に行ってくださっている海江田純彦先生からの要請に応える形で、ペット問題について初めて意識することになった。
海江田先生からの要請は、飼い主が避難しなければいけない状況の中で、止むにやまれず手放すことになってしまった犬や、戦闘エリア区域に住んでいた犬達への支援。
先生は暫定的に集められた犬達の食糧支援を行いたいと自ら私へ連絡をくださった。
私が属する財団法人Peace! do it!の協力の下、現場のボランティアへ連絡を入れたところ、食料はとりあえず足りていることが分かった。支援金額にマッチして尚且つ今必要なものとして日光を遮るシートが欲しい。との保護施設の現場からの要望を受け、早速市内の園芸用品を扱うお店で50mのビニールネットのシートを購入した。
その用途は画像にある通り。小屋への直射日光を遮るために有効な方法で設置されているので一安心。
支援者の海江田先生へ犬の保護施設関係者一同から感謝の言葉をいただいた。
私たちからも改めてお礼申し上げたい。
こういった日本からの要請は、私自身気づいていないことがあるのでとても有難いし、もし気になることがあればご連絡ください。皆様の温かい気持ちにできるだけ応えていきたいと思います。
ボランティアの女性に現状を少し聞いてみた。
足りないものは?との質問をしてみると、彼女は下を向いて少し息を吐いた後、
とりあえず今は食糧はあるけれど、全てにおいて十分に足りることはない。といった。
食糧や設備に関してはもちろん、定期的に必要なワクチン・ノミ対策など虫退治の薬は、500匹以上いる犬全てに対応するにはより多くの資金が必要なこと。【ワクチンは1匹当たり200грн(約800円)】これが継続的に必要になる。また、散歩のボランティアの手伝いはあるが、リードはすぐに擦り減ってしまうし首輪も必要。
生き物の保護活動は一度始めたら休みなく継続的な労働が伴うため、ものすごく大きな覚悟を持って取り組まねばならない支援なのだと痛感した。
虐待やネグレクトがない状況でも、飼い犬達は安住の棲家と飼い主を求めているのだ。
スームィ国境付近で保護されたママ犬(出産し子犬と共に生活)の小屋の前でボランティアの女性と話していたら、とある引き取り希望の家族が子犬を見にやってきていた。体躯がしっかりした垂れ耳の茶色いかわいい子犬達。
譲渡の際には住まいの状況(スームィ市内であること・避難勧告エリアではないこと)、身分証パスポートの確認などがしっかり行われるので、責任ある行動ができる家族のもとへのひき渡しを徹底していることを強調していた。
犬はきっと全てを悟っている
最初は攻撃的だった犬達の鳴き声を聞いて、それぞれの顔を見ていると何かを訴えかけていることが分かった。性格がすぐに分かる犬と近寄ってもこない犬。弱々しく鳴く犬。おそらく高齢で大人しい犬。狭い柵から鼻を出して撫でて欲しい犬。皆、知らないもの同士一緒の檻に入れられ、飼い主を探して欲しいと訴えているようで、戦争によって引き裂かれた家族は人だけではなく動物も同じなのだと思った。
ドネツク州のアウディーイウカ・クラマトルスクやスームィの国境周辺から避難してきた犬を中心に、ヘルソンでの原発事故の後にはその周辺エリアからやってきた犬もいる。
誰も口にはしないが、年老いた犬や大型犬を中心とした大人になった成犬の譲渡は難しいだろうと思う。
スームィ市は州都といっても戦争によって人口も減っており、富裕層はずいぶん前に避難してしまっている(そもそも富裕層が雑種を好むのかも疑問)。ソ連式アパートに住んでいる人々が多く、新たな家族として保護犬を引き取るという愛護精神が活発に湧き立つ状況は、今の国の現状を考慮しても難しいことは確かだ。
命は最期まで面倒を見なければいけない。
NPOの代表と犬の鼻先を撫でながら、無常の中で犬達の心の叫びを浴びていたらとても切なくなった。
この切なさは犬に向けられたものであり、この国の状態であり、戦争への憤りであり、無力な自分であり、『可哀想だね。』といって泣いてしまう表面上の生理現象なんかよりもっと深部に刺さる、鈍痛すら感じる感覚だった。
彼も同じ心境だっただろう。帰り道、何も話さずにスームィ市の中心部まで戻ってくる途中、鼻水が垂れてしょうがなかった。
私が属する法人はスームィ市で活動する慈善団体です。
まだまだ規模が小さく戦争開始後に設立された法人ですが、日々のヒアリングや考案したプロジェクトを行なっています。戦争が長引くにつれ問題は多岐に渡り山積しています。
犬の保護活動に関しての支援を募っています。ご関心があればご連絡ください。
БФ “Мир! Зроби це!” Web Site
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【慈善団体Peace! Do it!・ウクライナ国内振込情報】
受取人団体名 / БО БФ МИР! ЗРОБИ ЦЕ! CO CF PEACE DO IT (慈善団体ピース!ドゥ イット!)
メールアドレス / contact@peacedoit.org
団体住所 / 3 KHARKIVSKA STR., APARTMENT 4, SUMY, 40035, UKRAINE
金融機関名 / JSC CB “PRIVATBANK”
Bank SWIFT code / PBANUA2X
SWIFT Code of the correspondent bank / BOTKJPJT (海外送金を行う際に中継する銀行のコード)
Account in the correspondent bank / 653-0467367
IBAN Code / UA173375460000026004025203026
Correspondent bank The Bank of Tokyo Mitsubishi / 取引銀行 三菱東京UFJ銀行
送金目的 / Charitable contribution 慈善寄付
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
ここスームィから今後も不定期に発信していきます!
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